細胞は“分子”と呼ばれるとてもたくさんの生体部品から構築されています。
中でもよく知られているのは、DNAと呼ばれる遺伝情報を持つ分子であり、この情報を元にRNAと呼ばれる他の分子やタンパク質が作られます。さらに作られたタンパク質が糖や脂質という他の分子を作り、これらが細胞の部品となっていきます。
膨大な種類の分子や遺伝子の中で、本当に細胞に必要なものはどれくらいあるのか?
もしそれら最小限の部品を組み合わせたら、本当に生きた細胞ができるのか?
生きていないただの物質である分子から、どうやって生命現象が成り立っているのか?
このような疑問に応えるため、個々の生体物質から人工細胞を創る研究を行なっています。中でも細胞の形を決め自己と非自己を隔てる“膜”に焦点を当て、外殻としての膜だけではなく、機能を持った細胞膜の構築に挑戦しています。
最終的には自律的に成長し分裂する人工細胞の構築を目指し、生命現象が創発する瞬間を観察することを目指しています。
人工細胞を創ることは、地球上で初めて生命が誕生したそのプロセスをたどり直すことにつながります。生きた細胞を作ることで、40数億年前の地球上で生命がどのように誕生したのかを考える手掛かりになります。