2008/09/28 - 2008/09/29
寝台特急カシオペア
上野駅13番ホーム入線15:35頃 → 上野16:20発 → 大宮16:45 → 宇都宮17:50 → 郡山19:13 → 福島19:52 → 仙台20:59 → 一ノ関22:08 → 盛岡23:16 → 函館5:01 → 森5:52 → 八雲6:18 → 長万部6:42 → 洞爺7:12 → 伊達紋別7:24 → 東室蘭7:44 → 登別8:00 → 苫小牧8:33 → 南千歳8:55 → 札幌9:32着

日本の長距離列車の頂点に君臨する寝台特急カシオペアに乗車する機会をついに得ました.私の鉄道乗車記としても史上最高のクドさになっています.本当に寝てる暇がなく,徹底した乗車記をと意気込んだら大長編の自己満ログとなりました.渾身のレポートにお付き合い下さい.

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上野駅13番ホーム.カシオペア入線前.列車に積み込む食料などを準備中.
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15:35頃にホームへ入線してきます.
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15時頃にホームに着いたので,待ち合わせスペース「五ツ星広場」でスタンバイ
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広場と言っても,椅子が並べられただけの簡素なもの

カシオペア上野駅13番ホーム入線.機関車がカシオペアを押す形でホームに入ってきます(推進入線)
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牽引するのは特別カラーのEF81形電気機関車.上野〜青森間の担当
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客車はJR東日本E26形.ステンレスボディーが神々しい
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【ス】車体重量37.5〜42.5tの客車
【ロ】二等車(イロハの2番目)
【ネ】寝台車(寝るに由来) と読みます
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うつくしいカシオペアロゴ

カシオペアはオール二階建て,そしてオール2人用個室寝台です.用意されている部屋はグレードの高い順に
  • スイート
  • デラックス
  • ツイン
    とあり,ツインが最もスタンダードで部屋数の多いタイプです.さらにツインには「車端室」「1階室」「2階室」と3種あり,今回利用したのは「ツイン1階」です.2階室は眺めが良いが上にあるので揺れが大きめ,1階室は2階に比べて眺めが良くないが地面に近いので揺れが少ない,車端室は1階室・2階室より床面積がやや広いが車端なので揺れる,という一長一短があります.
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    通路からツインの1階室入り口を見たところ.2つの部屋が1つの階段を共用
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    ツイン1階室内.
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    逆方向からのショット.左手前の扉の向こうに御手洗&洗面台があります

    カシオペアツイン室内のベッドメイク実演
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    リネン.紫色のはカシオペア特製浴衣.
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    上野駅で発車待ち.向こうに見えるのは常磐線特急スーパーひたち.
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    車端にある「ミニロビー」.共用スペースなので自由に使えます.
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    ミニロビーの向かいにある自販機.懐かしいリボンシトロンが!
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    1階部屋なので,視点がかなり低い.これは大宮駅発車直後だったか.

    駅に着くと当然ながら,ホームにわんさかいる客からジロジロ見られます.しかしカーテンを閉じることなく,堂々とくつろぐ我ら.「はっはっは.一般民どもよ,せいぜい明日からのお仕事をがんばってくれたまえ!(乗ったのは日曜日の夕方だったのだ)」と,この優越感が実にたまらない.これを味わうためにカシオペアに乗っていると言っても過言ではないのだ.
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    発車から1時間余り,利根川を越える頃にウエルカムドリンクが届く.オレンジジュース,烏龍茶,温かい日本茶から選択.で,日本茶を.コップも特製.
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    先頭客車は共用のラウンジカー.前面窓から機関車が見えます.車窓は宇都宮駅.
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    各部屋にはモニタがあり,衛星放送やナビ画面が見れます.
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    停車駅が近づくとこうしてアラートをかけてくれます.福島駅着は20時ごろ.
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    お次はディナータイム.3号車のダイニングカーへ.

    カシオペアのディナーは完全予約制.
  • 1回目 17:15〜18:15 懐石御膳
  • 2回目 18:30〜19:50 懐石御膳 or フランス料理
  • 3回目 20:10〜21:20 懐石御膳 or フランス料理
    の中から選びます.今回は3回目のフランス料理を予約.懐石御膳は5,500円.フランス料理は7,800円.この他,部屋にお届けのカシオペア・スペシャル弁当(3,500円)もあり.この日はどの時間帯も予約完売.予約できなかった人は21:30からのパブタイムで自由な利用が可能.酒類やおつまみをオーダーできる.
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    我々のテーブルは2人席,向こうは4人席.
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    前菜からデザートまでひとそろいのコース.
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    まずはカシオペア特製ワインで乾杯
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    カベルネ・ソヴィニヨン.なにぶん揺れるので呑みすぎは禁物
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    〜サラダ仕立てのオードブル〜 アスパラガス,フルーツトマト,帆立貝と蟹のサラダ バルサミコ風味
    いきなり旨い.全ての材料がバルサミコに合う中で,特にトマトが美味.アスパラガスから帆立まで,硬軟さまざまな歯ごたえを楽しめるのもいい.
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    〜魚料理〜 平目の湯葉包み蒸 バジルのムスリーヌ添え 青森産ニンニクのクリームソース
    ソースが抜群に旨い.代わりに湯葉の風味が消えてしまっているのは残念だが,平目の味が淡泊なだけにソースはこれくらい濃くて正解.
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    〜肉料理〜 牛フィレ肉のソテー 温野菜添え 赤ワインソース
    これは正直「普通」な感じ.フィレ肉は特段印象に残る肉質ではなかったし,ソースも良くある味.全体的にまとまってはいるがメインとしてはパンチがない.前2品の印象が非常に良かっただけに,ちょっと中だるみの印象.
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    〜デザート〜 特選デザートとフルーツの盛り合わせ
    好物のピンクグレープフルーツが出てきたのはプラスポイントだが,もう少しフルーツの量を食べたかった.チョコレートケーキは少し甘すぎだが,ワインが少し余っていたのでその苦み渋みと合わせてちょうど良かった.
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    やはり雰囲気で美味しくいただくことにおいては唯一無二のシチュエーションです.値は確かに張りますが,環境料や揺れる車内でのスタッフの苦労を考えると納得できる価格.しかし欠点も.2階建ての2階部分にあたるダイニングルームは,(2階客室同様に)窓が湾曲していて,そこに映り込む車内の反射光が大きく歪んで非常に見心地が良くない(左写真参考).あまり見続けていると酔うので注意.ディナーではあまり外(窓)を見ず,対面に座った人と料理を見つめてあげましょう.その方がイロイロと当たり障り無く済むかもしれません.
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    ディナーが終わって客室に戻り,一息つくと22時.岩手県一ノ関駅に到着.
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    フレンチで満たされたお腹も落ち着いたので,次はシャワータイム.車内で売ってるカシオペア特製のシャワーセット.これはナイスアイテム.
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    カシオペアには2カ所の共用シャワー室があり,30分毎に区切った時間設定のシャワー予約カードを車内で買います.シャワー室にカードを挿入すると,6分間お湯が出ます.この6分間がかなり微妙.シャンプーして洗い流してリンスして洗い流して体を洗って・・・と,終わった時は残り20秒でした.ロングヘアの女性にゃとても間に合わないと思います.
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    23時を過ぎ,電車は盛岡を過ぎて青森へ入らんとするところ.再びラウンジカーへ行くと誰も居らず...
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    EF81電気機関車かぶりつきの眺め.夜間のラウンジは車内の灯りが窓に反射して外が全く見えません.自室で明かりを消して,外を眺めるのがベターです.
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    2:30頃 青森着.上野から客車を牽引してきたEF81はここでお役ご免となり,青函トンネル用のED79型に付け替え.青森駅はスイッチバック式の構造なのでED79をカシオペアのお尻に連結し,逆方向に発進します.

    3:30 青函トンネルへ突入.トンネル内の高湿度のために,突入した途端に窓が一気に曇る.見る景色もないので次第に強い眠気が.突入後約7分で1つ目の海底駅である竜飛海底駅を通過.曇りガラスの向こうにプラットホームらしき連続した明かりが行き過ぎるのを確認して,寝落ち...
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    4:10 青函トンネル飛出.嫁はこれで初北海道を達成.5:29の日の出に向かって,だんだんと白んでくる.

    薄明の中,函館駅直前,五稜郭駅付近を走るカシオペア車窓の風景.
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    5:01 函館着.
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    この先の札幌までは非電化区間が多いため,電気機関車ED79がお役ご免となりディーゼル機関車DD51へ付け替え.
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    DD51を2台連結した重連運転でラストスパートをかける.
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    5:29 日の出.函館を出て,大沼国定公園を進むと,駒ヶ岳の山の端から太陽がいずる.
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    5:52 森着.駅弁「いかめし」であまりにも有名なこの駅.
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    地元の漁師さんはすでに一仕事を終え,収穫を手に陸に上がってきた様子.
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    この,朝の時間帯に内浦湾の絶景を拝めるのが,北海道行き寝台の醍醐味

    森駅を出発して1駅目,桂川を通過するころの内浦湾の眺めです。 朝の6時ちょうど頃。
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    カシオペアならではの大窓から独り占めする大海原の景色は最高
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    部屋に配られた朝刊に目を通す筆者.結局見てるのはTV欄.
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    ラウンジカーにある売店.飲料,おつまみ,弁当の他,記念グッズも
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    ラウンジカーである「カハフE26形車両」
    【カ】車体重量47.5t以上の客車
    【ハ】普通車(イロハの3番目)
    【フ】緩急車(車掌室または手ブレーキを備えた車両) と読みます
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    内浦湾の眺めを,朝のラウンジカーから
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    上野を出て17時間余り,札幌駅に到着です

    「カシオペア最大の見どころは何か」と訊かれれば,「真っ暗な車内から見る外の眺め」でしょうか.

    というのはつまり,車窓から見る星空のことです.ディナーよりも客室の間取りよりも何よりも,これがカシオペアの旅の中で一番印象に残るシーンでした. 上野を発った時は曇っていたものの,福島に入る辺りから次第に雲が取れ,仙台を過ぎディナーを終えて部屋に戻る頃にはすっかり快晴の夜空.最初は室内の明かりが窓に反射して分からなかったんですが,眠たそうな嫁に合わせて明かりを消した瞬間,窓一面に広がる満天の星空に圧倒されました. 田畑,森林,山の端といった風景が流れるその上に,昇ってきたばかりの冬の星座が煌々と輝いてます.この列車は窓の大きさがウリのひとつでもあるので,ベッドに横たわって列車の揺れに身を任せ眼前に広がる星空を眺めていると,宇宙空間を走っているかのような「リアル銀河鉄道の夜」が味わえます.こんなシチュエーションが待っていようとは,乗車前には全く想像しませんでした.

    あまりに出来すぎててウソっぽささえ感じる画に半笑いでしたが,ホントです.しかし悔しいかな,どうやってもその画をカメラに収めることが出来ませんでした.疾走する列車の中でブレなく長時間露出させるなんざ無理無茶無謀.何度もトライしましたが一枚とて満足に映ってませんでした.

    なので,左の写真は「イメージ」です.肉眼で,本当にこういう景色が見れます.

    去年,サンライズ瀬戸に乗った時も,大きな窓から見上げる星空を楽しんだけど,思えばあれは東海道〜京都〜大阪〜岡山〜香川という,イマイチ空気の澄み切らない海沿いを走るので,星空がボヤけてました.その点カシオペアは言うことなし.栃木北部あたりまで行ってしまえば,あとはずっと都市部以外は素晴らしいシーイングが続きます. そして,乗る時期も良かった.1年のうちで星空が最も美しく華やかなのが冬であることはご存じの通り.札幌行きのカシオペアの場合,進行方向右側すなわち東側に客室があるので,その方向に冬の星座が出ていることが第一条件.第二の条件は,空気が澄んでるエリアで東の空に冬の星座が出ていること.つまり発車間もないうちにそれらの星座が出ていると,見頃の場所に来る頃には星座が昇りすぎて客室から見えなくなります.この2つの条件を満たすのは,すなわち今の時期だということ.そして当然ながら,晴天に恵まれることも重要な条件. 本当に,色々とツイてました. なーんて分かった風なことをイロイロ言っておきながら,今回の「見どころ」は結局は予想外のことだったわけで,他の時期に乗ったら乗ったで,その時じゃないと気付かない良さがきっとあると思いますけどね.