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Our Research

Simple to Complex: Cell-free Synthetic Biology and Evolution

進化とデザインで創る生命科学


 我々のグループでは、
1)生物を構成する部品を組み合わせ、特定の機能に特化した無細胞分子システムを創り
2)無細胞分子システムを用いてタンパク質あるいは分子システム自体を進化させる
ことを目指しています。これにより、生命誕生の初期に存在したであろう原始細胞の性質を明らかにするとともに、実用化に資する分子や分子システムを構築します。


 単純な生き物の一つである大腸菌でさえも数千万個の以上の部品から構成されています。内部では数億以上の化学反応が同時に進行しています。このような高度な複雑性にも関わらず、
・わずか20分で自らのコピーをほとんど間違えることなく正確に作り出すことができる
・温度変化、栄養源の変化など様々な環境変化に適応することができる
・人工的には作ることが難しい複雑な化合物を作り出すことができる


このような驚くべき性質はどのようにして産まれたのでしょうか。答えは進化にあると考えます。現存する生命は全て進化の産物です。従って、我々が進化を実験室で再現できれば、現存する生命がどのようにできあがってきたのか(生命の起源)の一端を理解できるかもしれません。加えて実験室で進化という力を用いることで実用化に資する分子や分子システムを創り出すことができるかもしれません。


生き物は突然できあがったと考えるよりは、単純な生き物(物体?)から次第に高度化・複雑化していったと考える方が妥当です。我々は、このプロセスを実験室で再現しようとしています。つまり、まず生物を構成する細胞の部品(分子)を組み上げて特定の機能に特化した分子システムを創ります。この分子システムは、細胞の部品から構成されますが、細胞を含まない分子集合体です。従ってここではこの分子システムを無細胞分子システムと呼びます。


 次に、変異と選択を繰り返す進化というプロセスを用い無細胞分子システムを高度化してゆきます。生命の進化の多くは千年、万年の時間スケールで進行したと考えられています。一方で、タンパク質や核酸分子を対象とした場合、それよりも、かなり短い時間(1日〜数年)で実験室で人工進化を実現できることが示されています(定方向進化、directed evolutionと呼ばれています)。我々のグループでは、定方向進化の原理を無細胞分子システムの進化に適用し、システムの進化という現象を目の前でつぶさに観察し、これを理解することを目指しています。加えて、実用化に資する分子や分子システムを創り出すことで人類の発展に貢献したいと考えています。